赤瓦の屋根といくつもの煙突が連なる岡山県備前市伊部。駅に降り立った瞬間に漂う、かすかな薪の匂いと独特の静寂が訪問者を包み込む。この地はまさに、千年間火を絶やすことなく土と向き合ってきた聖地だ。路地裏を歩けば、どこからともなく轆轤を回す水音が聞こえてくる。
この地域を一躍有名にしたのが、映画『ハルカの陶』の存在だ。泥にまみれ、挫折を繰り返しながらも土の魅力に憑りつかれていく若者の姿を描いた同作は、多くの人々の心を動かした。映画がきっかけとなり、伊部の町には若き志願者が全国から集まるようになり、途絶えかけていた技術の灯火に再び力強い風が吹き込んでいる。