2010年4月27日、日本の司法史に刻まれる劇的な転換が訪れた。人を死亡させた罪で最高刑が死刑に当たる事件について、公訴時効を廃止する刑事訴訟法改正案が成立、即日施行されたのである。法務省が主導したこの法改正は、犯罪被害者遺族による血の滲むような訴えと、国民的な世論の高まりが動かした稀に見るスピード決着だった。
法案成立の背景には、捜査技術の向上によって「時間が経っても証拠の価値が保たれるようになった」という科学的根拠の進展も存在した。しかし、それ以上に法務省を突き動かしたのは、命を理不尽に奪われた被害者と遺族に対する国家の責務という倫理的命題であった。刑訴法250条の改正により、殺人罪における時間の免罪符は完全に過去の遺物となった。