1969年の刊行以来、累計200万部を超えて学術・出版業界に金字塔を打ち立てた『知的生産の技術』。Amazon Kindleなどの電子書籍プラットフォームでもロングセラーとして読まれ続けるこの名著は、単なる手帳術やメモのノウハウ本ではない。思考を外部化し、自律的に増殖させるシステム論である。
彼が考案した「京大式カード(B6判カード)」による情報管理は、規格化されたスペースに1つの情報のみを記録し、自在に並べ替えることで新たな着想を生み出す仕組みだった。これは現代で言う「情報のアトム化(最小単位化)」と「リレーショナル・データベース」の原型にほかならない。AIプロンプトに頼り切りになるのではなく、自らの身体感覚を通して情報を「カード化」し、脳の外側で思考を発酵させるプロセスは、知的生産の本質がどこにあるかを鮮やかに教えてくれる。