映画ファンを感涙させた大きな転機が、映画『男はつらいよ お帰り トラさん』での銀幕復帰だった。山田洋次監督からの熱烈なオファーを受け、再び及川泉役としてカメラの前に立った彼女の佇まいは、長いブランクを感じさせない圧倒的な説得力に満ちていた。スクリーンに映し出された表情には、ヨーロッパでの年月が刻んだエレガンスと、人間としての深みが色濃く滲み出ていた。
この作品での演技は、単なる懐かしさの演出にとどまらず、女優としての第二章を決定づける重要なステップとなった。共演者たちとの自然体な掛け合いや、役に注ぎ込まれたリアルな人生の経験値は、観客の心に深い余韻を残したのである。