山の斜面を這うように築かれた登り窯。その胎内には、幾重にも計算された火の通り道が存在する。大量の赤松を昼夜を分かたず焚き続け、窯内の温度が千数百度に達したとき、土に含まれる鉱物と降り注ぐ薪の灰が化合し、二つとして同じもののない自然釉が生み出される。
この過酷な工程こそが、美濃焼が誇る「志野」や「黄瀬戸」の味わい深い表情の源泉だ。窯を炊き上げる数日間の緊張感はすさまじい。わずかな風向きの変化や薪の投入タイミングのずれが、すべてを無に帰すリスクを孕む。だからこそ、炎を鎮め、数日後に窯出しを行う瞬間の静寂には、祈りにも似た神聖さが漂う。