すべての発端は1974年、創業者の吉村実が横浜の地で創り出した一杯に遡る。九州の豚骨と東京の醤油を融合させた豚骨醤油ラーメンは、瞬く間に労働者たちの胃袋を掴み、やがて横浜家系ラーメンという一大ジャンルを確立した。濃厚な動物系スープにキレのある醤油、そして鶏油の膜が蓋をする構造は、一度ハマれば抜け出せない中毒性を持つ。
しかし、このスープは極めてデリケートだ。大量の豚骨と鶏ガラを高火力で炊き続けることで生まれる絶妙な乳化状態は、冷めると油分と水分が分離し、再加熱時に風味が飛んでしまう。この物理的な壁が、長年「家系は店で食うもの」という固定観念を強固にしてきた。
その常識を打ち破ったのが、マイナス数十度で一気に熱を奪う超急速凍結技術である。スープの分子構造を破壊せず、炊きたての香り成分を閉じ込めるプロセスの確立により、直系店特有のパンチのある味わいが工場や厨房から寸分違わず家庭へ直送可能となった。