甲斐バンドにとって13枚目のシングルとして1979年10月5日にリリースされた『安奈』は、バンド史における最大の転換点に生まれた楽曲です。直前にリリースされた『HERO(ヒーローになる時、それは今)』がオリコン1位を獲得し、空前のミリオンセラーを記録。日本中に「甲斐バンド旋風」が吹き荒れる中、次の一手に業界中が注目していました。
ロックバンドがメガヒットの直後にバラードをシングルとして切る戦略は、当時の音楽業界では大きな挑戦でした。しかし、甲斐よしひろが提示したのは、熱狂的なロックビートではなく、凍てつく夜の静けさと切なさを描き出すアコースティック主体の世界観でした。
結果として『安奈』はオリコンチャートで最高4位を記録し、約50万枚のスマッシュヒットを達成。『HERO』の一発屋で終わるのではないかという一部の批評家の懸念を完全に払拭し、甲斐バンドの音楽的表現力の幅広さと確固たる地位を決定づけました。