甲骨文字が生まれた現場の熱気を直接体感できる場所が、中国河南省に新設された殷墟博物館の大規模新館だ。ここには、最先端の展示技術とともに数多の国宝級甲骨が整然と並ぶ。ガラス越しに見る小さな骨の欠片には、3000年前の刻字師の手の震えや、刃物の角度までもが克明に残されており、訪れる者を圧倒する。
この博物館の背景には、現在も進行中である大規模な殷墟発掘プロジェクトの成果が存在する。中国社会科学院考古研究所をはじめとする合同調査団は、宮殿跡や王陵区だけでなく、職人たちの工房跡や住居区の全面的な再調査を実施。3DマイクロCTスキャン技術を投入することで、未開封の土塊の内部に眠る微小な甲骨破片すら非破壊で検出することに成功している。殷墟発掘プロジェクトは、文字という点だけでなく、殷王朝という文明の立体的な実像を日々更新し続けているのだ。