湊かなえ氏の原作小説と、塚原あゆ子監督・奥寺佐渡子脚本によるTBSドラマ版では、物語の骨格は共有しながらも、構造とトーンに大きな違いが存在します。
最大の相違点は、元警察官・高野茂(三浦友和)とその妻・夏恵(原日出子)というドラマ完全オリジナルキャラクターの存在です。原作は登場人物たちの一人称独白(モノローグ)のみで淡々と進む冷徹な構成ですが、ドラマ版では高野が10年前の青景島放火事件と東京のタワーマンション事件を繋ぐ探偵役として配置され、視聴者をサスペンスの深部へ導くガイドとなりました。
さらに、最終回における杉下希美の結末の描かれ方にも明確な演出意図の違いが現れています。
胃がんに侵され余命宣告を受けた希美は、自身の病を安藤には明かさず、島へ帰郷します。原作での希美はよりドライに己の運命を受け入れますが、ドラマ版では成瀬が営むレストランの予約を取り、海辺で再会するシーンが情感豊かに描かれました。成瀬が希美の手を握り、「一緒に生きよう」と告げるラストシーンは、罪を共有した2人が過酷な運命の中で見出した唯一無二の救済として昇華されています。