南野陽子といえば、80年代後半に中山美穂、工藤静香、浅香唯とともに「アイドル四天王」と称され、オリコンチャート1位を連発した正真正銘のトップスターでした。トレードマークの黒髪と端正な顔立ち、そして『スケバン刑事II』で演じた正義感あふれる麻宮サキのイメージは、世間に強烈な印象を植え付けていました。
しかし、20代半ばを迎えた1990年代初頭、彼女は大きな岐路に立たされます。所属事務所からの独立トラブルや、アイドルブームの終焉に伴い、「清純派アイドルの南野陽子」から「一生涯表現を続ける女優・南野陽子」への脱皮が急務となっていました。
単なる人気タレントとして消費されることを拒み、自らの表現力だけで勝負できる舞台を求めていた彼女の元に舞い込んだのが、巨匠・降旗康男監督による東映文芸大作『寒椿』のオファーでした。既存のパブリックイメージを自ら壊してでも本物の芝居を届けたいという強い覚悟が、大胆な濡れ場への挑戦を決断させた最大の理由です。