日本人ビジネスパーソンが最も多用しがちな表現でありながら、欧米系マネージャーから「ぶっきらぼうで距離を感じる」と指摘される筆頭がI understandの使い方ニュアンスに起因する齟齬です。言語心理学および異文化コミュニケーション研究において、英語の「understand」は頭の中での情報処理や論理的把握、あるいは相手の困難な心情への「同情・共感」を指す動詞として強く機能します。
たとえば、上司から「明日の朝までにこのレポートを修正してほしい」と指示された際、真顔で「I understand.」とだけ返すと、ネイティブスピーカーの耳には「言っている理屈は把握しました(ただし、引き受けるとは言っていません/本当は納得していませんが)」という反抗的な含みとして響くケースが少なくありません。文化人類学者エドワード・T・ホールが提唱した「低コンテクスト文化」の英語圏では、言葉そのものの文字通りの意味が重視されます。相手が求めているのは「言われた内容の理解」ではなく「そのタスクを引き受けるというビジネス英語のメール返信における承諾の意思表明」だからです。
外資系ITコンサルティングファームのシニアディレクター(米国出身)は、弊誌の取材に対して次のように現場の違和感を語っています。「部下に指示を出した際、一言『I understand.』とだけメールが返ってくると、『何か不満や障害を抱えているのだろうか』『本当に着手してくれるのか』と不安になる。引き受けたのかどうかを再確認しなければならず、二度手間が生じるケースが目立つ」。このように、理解と同意を同一視する日本語の感覚をそのまま持ち込むことが、コミュニケーションの致命的な溝を生み出しています。