離婚件数を同居期間別に見ると、危険水域とされるフェーズが2つ存在します。1つ目は結婚生活の初期である「同居期間5年未満」で、全体の約30%を占めます。いわゆる「新婚の幻滅期」であり、生活習慣の違いや金銭感覚の不一致を乗り越えられずに早期決断を下すケースです。
しかし、近年の人口動態統計で最も注目すべき構造変化は、同居期間20年以上のいわゆる「熟年離婚」の比率が2割を超え、過去最高水準を更新し続けている点です。かつての昭和・平成初期であれば、退職を迎えた夫婦は「長年連れ添った情」で老後を過ごすのが一般的でした。その前提が崩れ去った背景には、制度と価値観の抜本的な変化があります。
熟年離婚を引き起こす主要因として、現場の専門家は以下の3点を挙げます。
第1に、年金分割制度の認知拡大と定着です。婚姻期間中の厚生年金記録を最大2分の1ずつ分割できる仕組みが整ったことで、専業主婦であっても離婚後の最低限の生活設計が立ちやすくなりました。
第2に、「子どもの自立」というかすがいの喪失です。子持ち夫婦の離婚率は未成年の子どもがいる時期には一定の抑制が働きますが、子どもが大学を卒業して就職したタイミングは、長年仮面夫婦を演じてきた親たちにとって「役目終了の合図」となります。
第3に、親の介護問題と夫の在宅ストレスです。定年退職によって一日中家にいる配偶者からの精神的圧迫(主人在宅ストレス症候群)に加え、義理の親の介護負担を一方的に押し付けられた瞬間、長年抑圧されてきた怒りが臨界点に達します。