日本中を震撼させた最大の震源地は、通称『百詩篇集』(『諸世紀』)の第10巻72番に記された四行詩でした。そこには「1999年7の月、天から恐怖の大王が降ってくる」という不吉な一節が存在し、これに続いて登場する「アンゴルモアの大王」という謎めいた名称が人々の恐怖を煽りました。
原詩におけるフランス語の記述「d'Angolmois」は、現代の文献学・歴史学の研究において、フランス西部の地名「アングーモワ(Angoumois)」、あるいはフランソワ1世を指すアナグラムというのが定説です。しかし、昭和後期の解釈では「モンゴル(蒙古)の逆読み」「核ミサイルの暗号」「環境破壊による大気圏崩壊」など、刺激的な憶測が飛び交いました。
抽象的かつ多義的な詩句だからこそ、受け手側の時代背景に応じてどのような危機感でも投影できる万能のスクリーンとして機能したことが、恐怖を無限に増幅させる要因となったのです。