かつてのアニメ作品において、なぜ子どもの叱責シーンとして「お尻を叩く」行為が選ばれていたのか。その最大の理由は、「視覚的なわかりやすさ」と「身体的ダメージの軽微さ(非致死性)」を両立できる漫画的記号(カートゥーン・ロジック)だった点にあります。
お尻ペンペンの元ネタ演出を遡ると、戦後の日本アニメ界に多大な影響を与えたアメリカの短編カートゥーン(『トムとジェリー』や『ルーニー・テューンズ』など)に行き着きます。欧米のアニメーションでは、いたずらをしたキャラクターをお仕置きする際、顔面への打撃を避け、お尻を平手やスリッパで叩く「スパンキング」がドタバタ喜劇の定番ギャグとして多用されていました。
顔や頭部を殴る描写は視聴者に直接的な痛みや生々しい暴力を想起させますが、お尻であれば「ペンペン」「パシパシ」という軽快な擬音とともに、コミカルなリアクションとして成立させやすかったというアニメーション演出上の必然性がありました。昭和期のアニメ制作現場では、家族の日常や親子の絆を描く一環として、落語や講談の「小言と折檻」の空気感を落とし込んだ演出として自然に受け入れられていたのです。