「常温で数週間放置してもカビが生えなかった」「夏場でも腐らないから山崎パンは危険だ」という実験談は、SNSや動画プラットフォームで今なお拡散され続けています。しかし、製パン業界の専門家や日本食品衛生協会の見解を検証すると、この言説には重大な誤解が含まれています。
そもそも、日本の食品衛生法において食パンへの保存料(防腐剤)の使用は原則として認められていません。山崎製パンの製品パッケージ裏面を見ても「保存料」の表記は一切存在せず、防腐剤まみれという言説は法制度の観点からも明確なデマです。では、山崎パンはなぜ安くて長持ちするのか。その答えは、添加物ではなく徹底された「製造ラインの衛生環境」と「物理的制御」にあります。
山崎パンの主力工場では、手術室や半導体工場に匹敵する「クラス10,000以下」の高度なクリーンルーム環境が整備されています。パンの生地は焼成時に中心温度が95℃〜100℃に達するため、焼き上がった瞬間は完全な無菌状態です。問題は冷ます工程(放冷)と包装ですが、外気からカビの胞子が混入しないよう徹底的に除菌された空気を送り込み、カビの侵入を防いだ状態で即座に密封包装しています。
さらに、パンの水分活性(カビが繁殖に利用できる自由水の割合)を厳格にコントロールしているため、包装が破られない限りカビの胞子が発芽できません。袋を開封して素手で触れば、空気中の胞子が付着して数日でカビが発生します。つまり「カビが生えない」のは、添加物の力ではなく国内最高峰の衛生管理設備と密閉包装技術の賜物なのです。