白鯨は、約400年前に暴食の魔女ダフネによって生み出された「三大魔獣(白鯨・大兎・黒蛇)」の一角です。全長約50メートルに及ぶ巨躯でありながら大気中のマナを利用して飛行し、周囲一帯に濃密な霧を撒き散らして生態系を蹂躙します。
白鯨が放つ霧には明確に異なる2つの性質が存在します。1つ目は、兵士たちの正気を奪い錯乱させる「精神汚染の霧(通常の霧)」です。これを直接吸い込んだ者は激しい頭痛や狂気に襲われ、前線で同士討ちを引き起こす引き金となりました。2つ目は、白鯨の最も凶悪な権能である「消失の霧」です。この霧を浴びて命を落とした者は、肉体が消滅するだけでなく「世界の記憶からその人物の存在そのものが消去される」という恐るべき因果改変を引き起こします。
どれほど高名な武人であっても、消失の霧に呑まれれば親兄弟や戦友の記憶から完全に忘れ去られます。作中でも、直前まで肩を並べて戦っていた同胞が霧に消えた瞬間、残された兵士たちが「最初からそんな部下はいなかった」と認識する異様な光景が描かれました。唯一、異世界からの転移者であり「死に戻り」の権能を持つスバルだけが、消された者たちの記憶を保持し続けるという過酷な運命を背負うことになります。