二宮和也という俳優の特異性を語る上で、避けて通れない金字塔が『硫黄島からの手紙』である。メガホンをとったクリント・イーストウッド監督は、オーディションテープで見せた彼の佇まいを一目で気に入り、当初の脚本にあったキャラクター設定を二宮の年齢に合わせて書き直したという逸話はあまりにも有名だ。
戦火に散る一兵卒・西郷を演じた彼の芝居には、英雄的な誇張が一切なかった。ただ「生きて故郷の妻のもとへ帰りたい」という切実な願いを、泥にまみれた瞳と震える指先だけで表現し切った。この国際的評価が、彼を単なるドメスティックなスターから、映画表現の最前線に立つアクターへと押し上げた決定打となった。