個人投資家が最も神経をとがらせているのが、いわゆる「優待改悪」の真偽です。2020年に成立したコロワイドによる子会社化の過程では、創業家と現経営陣の激しい対立が報じられ、買収後に株主還元が切り捨てられるのではないかという強い警戒感が市場に走りました。掲示板やSNS上でも「大戸屋の優待廃止」「額面が削られる」といった憶測が飛び交った経緯があります。
結論から言えば、優待制度そのものが大幅に改悪されたという事実は誤認です。大戸屋ホールディングスが公表している現行規定において、単元株(100株)を保有する株主に贈呈される優待額は1回あたり4,000円相当(年2回・計8,000円相当)となっており、外食銘柄の中でもトップクラスの還元額を維持しています。
では、なぜ改悪というキーワードが独り歩きしたのでしょうか。取材およびIR資料の時系列を辿ると、原因は「優待の電子化に伴うオペレーションの刷新」にありました。かつて配当通知と同封されていた紙の優待食事券から、専用の優待ポイントカードおよび電子チケット(QRコード決済方式)へ切り替わった際、これまで1円単位やお釣り感覚で気軽に使っていた古参ホルダーから「システムが分かりにくい」「店頭端末でエラーが出る」といった不満が噴出。この運用面の摩擦が、ネット上で「改悪」という言葉に変換されて拡散した構造が見えてきます。