中央道において「小仏トンネルを先頭に〇〇km」という道路交通情報は、もはや休日の定番フレーズとなっています。では、なぜ中央道の渋滞は小仏トンネル付近で激しく起きるのか。交通工学の観点から現場を分析すると、複合的な3つの物理的・心理的トリガーが存在します。
最大の原因は、道路構造における「サグ部(下り坂から上り坂へ変化する凹部)」の存在です。東京都八王子市と神奈川県相模原市の境界に位置する小仏トンネル手前(上り線約46kmポスト付近)は、長い緩やかな下り勾配から突如として上り勾配(最大約2.5%)へと切り替わります。ドライバー自身はアクセル開度を一定に保っているつもりでも、傾斜変化によって無意識のうちに時速10〜15kmほど車速が低下します。このわずかな速度低下が後続車に次々と伝播し、ブレーキランプの連鎖が「後方衝撃波」となって大渋滞へと発展するのです。
さらに追い討ちをかけるのが、トンネル坑口がもたらす心理的圧迫感です。周囲が開けた高架・山間部から暗く狭いトンネル断面へと突入する瞬間、ドライバーは本能的に車幅感覚への不安や圧迫感を覚え、わずかにブレーキを踏み込む傾向があります。NEXCO中日本の交通管制データによると、1車線あたりの交通容量限界は通常毎時1,800〜2,000台程度とされますが、小仏トンネル手前ではこの2大減速要因によって実質的な処理能力が毎時1,400台前後にまで落ち込みます。そこに休日特有の過大な交通量が殺到するため、構造的に破綻が生じる仕組みです。
加えて、右側の追越車線に車両が密集する走行特性も悪化に拍車をかけています。少しでも早く進みたい心理から追越車線に8割近い車両が集中し、車間距離が極端に縮まった結果、1台の減速が瞬時に後続車を完全停止へと追い込む悪循環が固定化しています。