この美術館のコレクションの心臓部は、公益財団法人平野政吉美術振興財団が管理する貴重な所蔵品の数々にある。秋田の素封家であり美術蒐集家であった平野政吉と、近代美術・エコール・ド・パリの頂点を極めた藤田嗣治。ふたりの出会いはまさに運命だった。「世界一の大壁画を描いて、秋田に美術館を建てよう」という途方もない約束。藤田は秋田の米蔵に籠もり、わずか約半年の期間で驚異的な集中力を発揮して大作を仕上げた。
互いに妥協を許さない男たちの意地と情熱。かつて日曜美術館(NHK)でも特集され、大きな反響を呼んだこのエピソードは、単なるパトロンと画家というドライな利害関係を超越していた。展示室に並ぶ藤田の繊細な素描や油彩画の一点一点からは、異国パリでの孤独な戦いと、秋田という土着の風土に心を開いた画家の知られざる横顔が静かに浮かび上がってくる。