多くの参拝者が驚くのは、軍人主体の神社と思われがちな境内に、幕末の志士たちが数多く合祀されている点だ。土佐藩を脱藩し薩長同盟の立役者となった坂本龍馬や、長州藩で松下村塾を開き数々の若者を啓発した吉田松陰。彼らは陸海軍が正式発足する以前の動乱期に命を落とした人物だが、しっかりとその名簿に刻まれている。
なぜ彼らが祀られているのか。その真相は、靖国神社の前身である「東京招魂社」の設立目的に遡る。1869(明治2)年、明治政府は戊辰戦争などの倒幕運動で命を落とした官軍側の戦死者を慰霊するために招魂社を建立した。その際、維新の精神的支柱となった吉田松陰や、倒幕の道筋をつけた坂本龍馬らも「殉難者」として合祀対象に含まれたのである。幕末・太平洋戦争史の系譜は、ここから地続きで始まっている。