1990年代半ば、スタジオジブリは大きな転換期を迎えていました。『紅の豚』を終え、次回作『もののけ姫』への構想を練る中でスランプに苦しんでいた宮崎駿監督のもとに持ち込まれたのが、CHAGE and ASKAの主題歌『On Your Mark』のプロモーションビデオ制作という異例のオファーでした。
当時、徳間書店グループとジブリは新たなクリエイティブの可能性を模索しており、本作は「ジブリ実験劇場」という冠を掲げて1995年7月15日に劇場公開されました。映画『耳をすませば』の本編前に上映されたこの短編は、台詞が一切存在せず、音楽と緻密なアニメーションのみで物語が進行する極めて実験的な試みでした。
宮崎監督はタイアップ企画でありながら楽曲の詞をそのまま映像化することはせず、独自の解釈と強烈な作家性を前面に押し出しました。その結果、わずか7分弱の尺の中に長編映画数本分に匹敵する設定と世界観が凝縮された、ジブリ史上最も先鋭的なSFアクション作品が誕生することになったのです。