舞台仕込みの確かな表現力で観客を翻弄し続けるのが阿部サダヲだ。かつて劇団☆新感線のパワフルな舞台などで見せた爆発的なコメディセンスは、映像作品においても異彩を放つ。しかし、彼の真骨頂は単なる喜劇にとどまらない。
白石和彌監督のサスペンス映画『死刑にいたる病』で見せた連続殺人鬼役は、まさに映画史に残る怪演だった。黒目がちで感情の読めない瞳、静かで丁寧な口調の中に潜む底なしの狂気。スクリーン越しに観客の背筋を凍らせたあの演技は、劇団☆新感線をはじめとする長年の舞台経験で培われた、間(ま)と身体性のコントロールが生み出した芸術と言えるだろう。