幼少期のレムは、何をやっても完璧な姉と自分を比較し、「自分は姉の添え物に過ぎない」という強烈なコンプレックスを抱えて成長しました。家事も魔法も戦闘も及ばない自分に対し、姉ラムは常に優しく接していましたが、その優しさすらもレムの自己評価を削り取っていきました。
その歪んだ均衡を決定的に破壊したのが、魔女教による鬼族の里の壊滅的襲撃です。
闇夜の中で炎に包まれる里、次々と倒れる同胞たち。窮地に陥ったレムを庇うため、ラムは自ら盾となり、魔女教徒の不意打ちによって自慢の角を切り落とされてしまいました。その瞬間、幼いレムの脳裏を一瞬だけよぎってしまったのが、「あぁ、お姉ちゃんが角を無くしてくれた」という禁忌の安堵感でした。
姉の絶対的な優位性が失われたことに対する瞬間的な安堵。この感情を自覚してしまったレムは、激しい自己嫌悪と贖罪の念に苛まれることになります。「姉からすべてを奪った出来損ないの妹」として、姉の身代わりになり、姉のために命を使い果たすことだけを存在意義とする自虐的な生き方へと縛り付けられていったのです。