「加熱したほうがたくさん食べられるから栄養を多く摂れる」という意見がある一方で、生食には生食ならではの卓越した栄養的アドバンテージが存在します。文部科学省の『日本食品標準成分表』のデータを見ても、ほうれん草の栄養素には「熱に強い成分」と「熱や水に極めて弱い成分」が混在しています。
ほうれん草を生で食べたときの栄養吸収率において最大の恩恵を受けるのが、ビタミンCと葉酸です。ビタミンCは熱に弱く、茹で調理によって約50%が破壊または茹で汁へ流出します。赤血球の形成に不可欠な葉酸も同様に熱と水で失われやすい栄養素です。これらを生のサラダで食べることで、損失を最小限に抑えて100%ダイレクトに摂取できます。
一方、ほうれん草に豊富に含まれるβ-カロテン(ビタミンA前駆体)やルテインは「脂溶性」の成分です。生のままノンオイルドレッシングで食べると、体内の吸収率はわずか10%未満にとどまります。しかし、オリーブオイル、ごま油、ナッツ類、あるいは炒めたベーコンなどの脂質と一緒に摂取することで、吸収率が約5〜7倍に跳ね上がることが実験データで確認されています。生サラダに油分を合わせる調理法は、美味しさだけでなく栄養学的にも極めて合理的な組み合わせです。