単なる「テレビドラマの特別編」と侮って本作をスキップし、連続ドラマ版から直接1998年の映画第1作『踊る大捜査線 THE MOVIE』へ進む視聴者が散見されます。しかし、これはストーリーテリングの観点から見て最大の過失と言っても過言ではありません。
脚本を手掛けた君塚良一氏およびプロデューサーの亀山千広氏が構築した「踊るユニバース」において、本作は連続ドラマの最終回で発生した人間関係の断絶を修復し、劇場版の爆発的ヒットへと繋げる不可欠なブリッジ(架け橋)として緻密に設計されているからです。
連続ドラマ最終回において、青島俊作(織田裕二)は本庁と所轄の壁に抗った結果、杉並北署の地域課へ左遷され、交番勤務へと逆戻りしていました。なぜ彼が映画版で再び湾岸署刑事課の最前線に立っているのか。その経緯を描いたのがまさに本作です。
恩田すみれ(深津絵里)が抱えるストーカー被害のトラウマ、和久平三郎(いかりや長介)が青島に託す刑事としての矜持、そして真下正義(ユースケ・サンタマリア)の昇任試験を巡るドタバタ劇など、後の劇場版で爆笑と感動を呼ぶ「キャラクター同士の関係性の下地」はすべて本作の中でアップデートされています。本作を抜きにして劇場版を観ることは、物語の第2章を読まずにクライマックスへ飛び込むようなものです。