インターネット上の掲示板やSNSでは、時折「子どもの頃、ナウシカのらんらんの歌が不気味で怖かった」「トラウマになった」という声が見受けられます。なぜ、幼い少女の無垢な歌声が一部のリスナーに恐怖や不気味さを想起させるのでしょうか。
音響心理学および音楽理論の観点から分析すると、以下の3つの要素が複雑に絡み合っていることが分かります。
- 感情の排除されたノンビブラート唱法:4歳児によるピッチの揺らぎがない無機質な発声は、感情を排した「異界からの声」のように聴こえやすく、心理的な緊張感を生み出します。
- 短調(マイナーコード)の重厚なドローン音:背景で鳴り響くシンセサイザーと低弦の持続音が重苦しい圧迫感を与え、明るいスキャットとの間に強烈な対比(認知的不協和)を生じさせます。
- 視覚情報(怒り狂う王蟲の暴走)との強烈な連動:画面上で展開される「無数の赤い目の怪物」や「死と隣り合わせの破滅的状況」という視覚的恐怖とメロディが脳内で固く結びついているためです。
つまり、この「怖さ」や「不気味さ」こそが、作品が意図した終末的世界観と神聖な救済のコントラストを完璧に成立させている証拠といえます。