「どちらを使っても似たような仕上がりになる」という思い込みは、予算と安全性を同時に破壊する。一般的な配合比率を見てみよう。モルタルは「セメント1:砂3」に水を加えるのが標準だが、コンクリートは「セメント1:砂2:砂利4」前後を基準とし、骨材の粒度分布まで厳密に管理される。強度の指標である圧縮強度において、標準的なモルタルが10〜15N/mm²程度にとどまるのに対し、構造用コンクリートは21〜36N/mm²、高強度設計では100N/mm²を超えることすら珍しくない。
直近の施工コストの差も無視できない水準に達している。原材料価格の高騰や物流の人手不足を背景に、生コンクリートのプラント出荷価格は全国的に高止まりを続けており、1立方メートルあたり2万円台半ばを突破する地域が続出している。一方、現場で手練りできるモルタル用プレミックス袋は手軽だが、体積あたりの単価に換算すると、実はレディーミクストコンクリート(生コン)を発注するより割高になる逆転現象が起きやすい。
「車の乗らない通路だから」と安易にモルタルを厚塗りした結果、冬場の凍結融解や地盤のわずかな沈下でバリバリに割れて補修費用が倍増したという事例は枚挙にいとまがない。駐車場土間のように日常的にトン単位の輪重がかかる場所には、最低でも100ミリ以上の厚みを持たせたワイヤーメッシュ入りのコンクリート打設が鉄則だ。逆に、数十ミリ以下の薄層補修やタイルの下地作りに砂利入りのコンクリートを使えば、骨材が引っかかって平坦にならず、接着不良を引き起こす。適材適所を外したコストダウンは、最も高くつく選択肢となる。