歴史を紐解けば、興味深い事実に行き当たる。1973年に日本テレビ系列で放送された最初のテレビアニメ版で玉子を演じていたのは、後にテレビ朝日版で野比のび太役を26年間演じることになる小原乃梨子だった。のび太の原点ともいえる名優が、かつては母親の声を担当していたという巡り合わせは実に感慨深い。
そして1979年、テレビ朝日版のスタートとともにマイクの前に立ったのが千々松幸子だ。小学館の雑誌連載から飛び出した玉子の、口うるさくも愛情深い「昭和のお母さん」像を確立したのは間違いなく彼女の功績である。テストで0点を取ったのび太を正座させ、お小遣いを巡って小言を並べる千々松のリズムは、世代を超えて日本人の耳に刻み込まれている。