『ちはやふる』のキャスティングには、現在でもネット上で誤解されがちなエピソードや、関係者のみぞ知る運命的な逸話が多数存在します。
【新田真剣佑の芸名と「綿谷新」の奇跡的な絆】
ネット上では「新田真剣佑はもともとそういう名前だったのではないか」と混同されることがありますが、事実は異なります。彼がデビュー当時に名乗っていたのは「真剣佑」でした。映画『ちはやふる』で綿谷新役を演じ、日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞した際、俳優としての原点となったこの役に深い敬意と感謝を込め、原作者・末次由紀氏の許可を得て役名の「新(あらた)」から取った「新田(あらた)」を苗字として冠したという経緯があります。自身の芸名に役名を刻むというこの決断は、俳優陣の本作にかける並々ならぬ想いを象徴しています。
【松岡茉優が極限まで追い込んだ「若宮詩暢」の役作り】
松岡茉優が演じたクイーン・若宮詩暢の圧倒的なスピードと札払いは、CG合成を極力排した実写のアクションです。松岡は撮影の数ヶ月前から競技かるたの特訓を重ね、専任読手のCDを四六時中聞き流すことで「耳」を極限まで鍛え上げました。指の皮がめくれ、膝にあざを作りながら挑んだリアルな所作があったからこそ、広瀬すず演じる千早との鬼気迫る頂上決戦が成立したのです。
【アニメ版声優陣とのハイレベルな相互リスペクト】
実写映画化にあたり、原作ファンやアニメ版ファンからの懸念を払拭したのも本作の特徴です。アニメ版で千早を演じた瀬戸麻沙美、太一役の宮野真守、新役の細谷佳正ら超実力派声優陣の熱演に対し、実写キャスト陣は徹底したリスペクトを持って役作りに臨みました。『結び』公開時にはアニメキャストと実写キャストの対談やエール交換が行われるなど、メディアミックスの理想的な成功モデルとなりました。