コブクロの生歌トラブルを語る上で欠かせないのが、テレビスタジオ特有の音響特性とイヤーモニター(イヤモニ)のメカニズムです。コンサートホールやアリーナと異なり、テレビ局のスタジオは吸音性が極めて高く、自分自身の声の生鳴りがほとんど返ってきません。
そのためアーティストはイヤモニから返るオケ(伴奏)と自分の歌声を頼りに音程や強弱をコントロールしますが、生放送の現場では回線トラブルやミックスバランスの微細なズレ、ミリ秒単位の音声遅延(レイテンシー)が発生するリスクが常に潜んでいます。特にコブクロのような繊細な主旋律と緻密な上ハモ・下ハモが交差するアコースティックスタイルでは、自分の声や相方のピッチがわずかでもモニタリングしづらくなると、修正が極めて困難になります。
さらに、ネット上で「生歌が下手になった」と錯覚される背景には、2019年の東京マラソン国歌斉唱などで話題になった「キー設定のミスマッチ」などの記憶が、Mステの印象と混同されて語り継がれている側面もあります。緊張感漂う生放送の一発勝負において、音響機器のトラブルや体調の波がわずかでも重なれば、百戦錬磨のボーカリストであっても本来のパフォーマンスを発揮することは極めて困難です。