深夜の住宅街を切り裂いた悲鳴と炎。甲府殺人放火事件の夜、犯行におよんだ遠藤裕喜は狂気に憑りつかれたかのように侵入し、夫婦の命を無残に奪い去った。当時、家にいた長女は階下からの異変に気づき、死線を超えた状況下で必死の抵抗を試みた。頭部を攻撃されながらも、一瞬の隙を突いて次女とともにベランダから脱出を果たした判断が、全滅という最悪の事態を食い止めたのだった。
しかし、助かったという事実自体が、彼女たちに「なぜ自分たちだけが」という生存者の罪悪感を植え付けることとなった。燃え上がる自宅を見つめるしかなかったあの数分間の恐怖は、何年経過しようともフラッシュバックとして襲いかかる。現場に残された血痕と焼き尽くされた思い出の品々は、人間の底なしの悪意と、惨劇が一瞬で奪い去る日常の脆さを物語っている。