夜明け前の静寂を切り裂くベルの音。東京都中央卸売市場の中枢である豊洲市場のマグロ卸売場には、今日も全国の港から届いた巨体が並ぶ。かつて築地場外市場が担ってきた大衆的な賑わいと、豊洲が誇る最新の衛生管理・定温流通。この二つの潮流が交錯する場所で、魚の扱い方は劇的な進化を遂げた。
水産庁の統計が示す通り、国内の魚介類消費量が長期的な変化を見せる中、あえて「ここでしか味わえない鮮度と技」に舵を切る料理人たちが増えている。単なる仕入れではない。仲卸との強固な信頼関係を結び、船上締めや神経抜きが施された魚体をピンポイントで買い付ける。その最高峰の素材が炊きたての米の上へと投じられる瞬間、海鮮丼は工芸品のような気迫を帯びる。