骨折の治療において最も多くの患者が直面する誤解が、全治と完治の違いです。警察への提出書類や職場の診断書に「全治4週間」と記載されている場合、これは「日常生活が完全に元通りになるまで4週間」を意味しているわけではありません。
整形外科の臨床において、「全治」とは主に骨折部のグラつきがなくなり、X線検査等で骨組織がつながる骨癒合期間目安(骨癒合が完了するまでの期間)を指します。一方、患者が実感する「完治」とは、骨がくっついた後に固まってしまった関節の可動域が戻り、落ちてしまった筋力を回復させ、痛みや違和感なく以前と同じ動作が行える機能的回復の達成を意味します。
骨癒合は「炎症期」「修復期(仮骨形成)」「再モデリング期(骨改変)」という3つの生理学的フェーズを経て進行します。ギプス固定が解除された直後は、あくまで仮骨が骨折部を橋渡しした「修復期」の段階に過ぎず、元の強度を持つ骨へと成熟し、周囲の軟部組織が柔軟性を取り戻すまでには、固定期間と同じかそれ以上のリハビリ期間が必要です。