高校入試の社会で上位層と中位層を残酷なまでに切り分ける最大の要因は、公立高校入試社会難化の理由の中核をなす「記述式問題の配点増加と採点基準の厳格化」にあります。全国の公立高校入試問題を見渡すと、東京都、神奈川県、愛知県、大阪府をはじめとする主要自治体で、単に人名や条約名を答えさせる記号・語句問題が減少し、30字から50字程度で理由や背景を説明させる問題が全体の20〜30%近くの配点を占めるようになりました。
大手進学塾の教務責任者は次のように現場の実態を明かします。「かつては年号や人名を暗記したシートを試験直前まで詰め込めば7割は堅かった。しかし現在の入試で出題されるのは、『なぜその政策が取られたのか』『資料Aと資料Bから何が読み取れるか』という因果関係を問う出題です。問題文の長文化も相まって、読解力と論理的構成力を持たない生徒は、試験時間内に解答欄を埋めることすらできません」。
社会は5教科の中で最も平均点が高くなりやすい傾向にあり、上位校を受験する層の多くは8割以上の得点を安定してマークします。その中で知識の断片しか持たない受験生が記述問題を白紙、あるいは部分点止まりで落とした場合、1問で3〜5点、大問全体で10点以上の差をつけられます。この10点のビハインドを数学や英語で取り返すことは至難の業であり、社会の記述対策を軽視した結果として不合格通知を受け取るケースが後を絶ちません。