情報空間でまことしやかに囁かれている言説の中に、「冷水シャワーで男性ホルモンのテストステロンが爆発的に増える」というものがあります。しかし、内分泌学の厳密な見地から言えば、これは一部誇張された誤解です。
精巣が熱に弱いため「睾丸を冷やすと精子の運動率やテストステロン産生環境が保たれる」という生理学的背景はあるものの、冷水シャワー単体で血中総テストステロン値が激増することを示す直接的なエビデンスは限定的です。活力向上を感じるのは、テストステロンの直接増加というより、ドーパミン受容体の感度向上と交感神経の刺激による覚醒作用が主な要因と捉えるのが妥当です。
それ以上に直視すべきは、冷水シャワーのデメリットと心臓への負担です。冷水が皮膚に触れた瞬間、人体は「コールドショック反応」を起こし、末梢血管が急激に収縮して血流抵抗が増大します。これにより収縮期血圧が一気に20〜40mmHg上昇し、脈拍が乱れるケースがあります。高血圧症や動脈硬化、心疾患の既往がある方にとって、いきなり頭や胸から冷水を浴びる行為は心筋梗塞や不整脈のトリガーとなり得る極めて危険な行為です。