なぜ、これまで「男性の手ぶら参列」が推奨されてきたのだろうか。その根底には、伝統的な冠婚葬祭フォーマルマナーが存在する。かつての礼服はポケットの容量やシルエットが厳格に設計されており、大きな荷物を手に持つこと自体が野暮とされた時代があった。伝説的な服飾評論家である落合正勝氏も、著書の中で服地のドレープや立体的な仕立てをいかに美しく保つべきかを繰り返し論じていた。
しかし、時代は大きく変わった。全日本冠婚葬祭互助協会や一般社団法人日本メンズファッション協会が発信する現代のマナー指針でも、時代の変化に伴う実用性の尊重が示されている。手ぶらにこだわりすぎるあまり、ジャケットのポケットがパンパンに膨らみ、生地を痛めたり型崩れを起こしたりする方が、結果として著しく美観を損ねてしまうのだ。