無事に退院を果たしたものの、待っていたのは「かつての自分」が完全に失われた現実だった。退院直後に彼女が足を踏み入れたのは、長年拠点としてきたスポーツクラブルネサンスのプールサイドだった。だが、水中に入った彼女を待ち受けていたのは絶望的な筋力低下。筋トレ用の自重すら支えられず、わずか数十メートルを泳ぐだけで息が切れ、体が沈んでいく。
「ゼロからのスタートではなく、マイナスからのスタート」。周囲のスタッフや指導陣は、彼女の命を守りつつ段階的に筋力を戻す精密なリハビリプログラムを構築した。焦る気持ちを抑え、数グラム単位のウエイトトレーニングから再開する地道な毎日。プールサイドで悔し涙を流しながらも、彼女は日々の微小な進歩を胸に刻み、一歩ずつ水中の感覚を取り戻していった。