濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』が世界的な評価を確立して以降、映像表現における「対話」と「時間の経過」の重みが見直された。ドラマチックな事件が起きなくても、車内での取り留めのない会話や、窓外を流れる風景だけで人間を描き切ることができる。
この潮流はインディペンデントからメジャーに至るまで広く波及した。他者と完全に分かり合うことはできないという絶望を引き受けた上で、それでもわずかに差し伸べられる手の温もり。痛みを即座に解決せず、ただそこに在るものとして見つめる眼差しこそが、不確実な今を生きる私たちの孤独をそっと解きほぐしてくれる。