現在、粟島を訪れる人の多くが漂流郵便局を目的地としている。人口減少や高齢化が進む瀬戸内の島々において、一過性の観光・地方創生ブームで消費されずに、十数年にわたって深く人の心を惹きつけ続けている事例は極めて稀だ。
国内外の美術評論家たちも、本作を「ケアとアートの幸福な融合」として高く評価する。SNSの普及によって誰もが即座に繋がれるようになった反面、感情の処理速度が追いつかず孤立を深める現代人にとって、時間を止めて想いを漂流させるプロセスそのものが一種の精神的カタルシスをもたらしている。
作品が地域に根ざし、住民の手で守られ、世界中からの手紙を抱え続ける。漂流郵便局は、アートが地域社会と個人の生にどこまで深く寄り添えるかという問いに対する、一つの美しい回答を示している。