「昔の西口を知る人間からすれば、今の風景は信じられないほどの変貌ぶりです」――金沢駅前で長年営業を続けるタクシードライバーがそう語るように、かつての金沢駅西口は旧国鉄の操車場や貨物ヤードが広がり、商業施設といえば駅前の数軒の喫茶店や居酒屋にとどまる、文字通りの「裏口」でした。観光客のほぼ100%が東口へと流れ、西口を歩くのは近隣のオフィスへ通勤する会社員や予備校生ばかりだった時代が長く続きました。
転機となったのは、金沢駅西口の再開発の経緯における複数段階の都市基盤整備です。金沢市が策定した新都心構想に基づき、石川県庁の駅西移転(2003年)を契機として道路ネットワークが整備され、2015年の北陸新幹線金沢開業によって都市間競争の最前線へと浮上しました。さらに決定打となったのが、2020年8月に開業した大型複合開発「クロスゲート金沢」です。国際的ホテルブランドの進出と洗練された商業フロアの誕生により、人の流れは根本から変わりました。
ここで多くの旅行者が抱く疑問が「金沢港口と西口の違い」です。結論から言えば、これらは完全に同一の場所を指しています。北陸新幹線開業に伴い、東口に「兼六園口」、西口に「金沢港口(かなざわこうぐち)」という公式な愛称が付与されました。海の玄関口である金沢港クルーズターミナル方面へと直結するゲートウェイとしての性格を強調した命名ですが、地元住民や乗換案内では今なお「西口」の呼称が広く親しまれています。