2023年10月11日、第71期王座戦第4局で永瀬拓矢王座(当時)を破り、藤井聡太の八冠達成が現実となった瞬間、ネットコミュニティの熱量はピークに達しました。特に「なんJ将棋まとめ」界隈や関連実況スレッドでは、通常1スレッド(1000レス)の消化に数十分を要するところ、わずか2〜3分ペースでスレッドが次々と埋まる異例の事態が記録されています。
当時、スレッド内に溢れ返ったのは、単なる勝敗への賛辞にとどまらない「現実離れした存在に対する畏怖」でした。八冠独占の伝説スレとして今なおアーカイブで語り継がれる書き込みには、ネット住民特有のシニカルな視線と純粋な畏敬が入り混じっていました。
「漫画の主人公でも編集部にボツにされるレベルの無双」「羽生の七冠ですら奇跡だったのに八冠はゲームのバグ」「同時代を生きる他のトッププロが不憫すぎる」といったネットの反応と評価がタイムラインを埋め尽くしました。とりわけ、王座戦第4局で見せた大逆転劇――AIの勝率表示が永瀬優勢から一瞬で藤井勝勢へと跳ね上がった劇的な収束局面は、「詰みが見えてからの速度が人間ではない」となんJ民を戦慄させた決定的瞬間です。
翌日の新聞各紙が一面トップで報じ、号外が主要駅で配られる中、ネット上では「これで将棋界はエンディングを迎えたのか」「これ以上、目指すべき頂が存在しないのではないか」という喪失感すら漂っていました。しかし、その懸念は後の新世代の台頭によって、より深遠なドラマへと昇華していくことになります。