かつて研修センターで寝食を共にした元行員や現役中堅行員たちの手記や取材証言からは、現場特有の厳しさと温かみが克明に浮かび上がります。
「入行式直後の合宿研修初日、教官から投げかけられた『君たちの一挙手一投足に南都銀行の信用がかかっている』という言葉は、今も耳から離れません。佐保川沿いを同期と走り込み、夜遅くまで札勘の模擬試験を繰り返した日々は肉体的にも精神的にも過酷でしたが、あの鍛錬があったからこそ、最初の支店配属で理不尽な壁にぶつかった時も耐え抜くことができました」(1990年代入行・支店長経験者の回想手記より)
一方で、時代が下るにつれて施設への視線には変化も生じていました。2010年代以降に入行した若手行員の座談会記録では、以下のような本音も吐露されています。
「宿泊型の集合研修は同期の絆が深まる反面、常に緊張を強いられる環境でもありました。周辺の寮社宅に入居していた若手にとっても、休日返上で集められる階層別研修は心理的な負担が小さくなかったのも事実です。現代のデジタルツールを用いた効率的な自己学習と、現場でのOJTを重視するスタイルへの移行は、時代の必然だったと感じます」(2010年代後半入行・現役本部行員の証言)
かつては美徳とされた「密接な集団合宿」が、ワークライフバランスや心理的安全性といった新しい組織マネジメントの価値観と衝突し始めたことが、物理的な研修施設の見直しを後押しした背景として読み取れます。