かつて家庭料理の象徴であった郷土料理の多くが、共働き世帯の増加や食の多様化に伴い家庭の食卓から姿を消しつつあります。しかし、香川県におけるこの料理の存在感は衰えていません。その最大の立役者となっているのが香川県学校給食の現場です。
県内の公立小中学校では、毎年11月から2月にかけての地産地消推進週間や「ふるさと給食の日」に、必ずと言っていいほど献立表に「まんばのけんちゃん」が登場します。学校給食センターの栄養教諭への取材報告によると、「低学年の児童からは『面白い名前!誰の名前?』と必ず質問が出ますが、給食だより等で地域の農業や歴史と結びつけて説明することで、郷土理解の生きた教材になっている」と語られています。
SNS上での香川県出身者の声を分析すると、「子どもの頃は野菜の苦味と豆腐の地味な見た目が苦手だったのに、上京して冬になると無性に食べたくなる」「給食の献立表を見て名前の響きをからかい合っていたのが懐かしい」といったノスタルジックな投稿が毎年冬になると急増します。単なるローカルフードにとどまらず、讃岐にルーツを持つ人々のアイデンティティを形成するソウルフードとして機能している様子がうかがえます。