犀川堤に架かる鮮やかな朱色の太閤出世橋を渡ると、墨俣一夜城址公園の緑の中にそびえ立つのが大垣市墨俣歴史資料館です。平成3年(1991年)4月、旧墨俣町の町制100周年記念事業として開館したこの建物は、当時の砦を復元したものではなく、大垣城天守を模して建てられた鉄筋コンクリート造り・地上5階建ての本格的な模擬天守となっています。
館内に足を踏み入れると、木下藤吉郎の出世物語と墨俣築城の全貌を体系的に学べる充実した展示フロアが広がっています。数ある墨俣一夜城見どころのなかでも、絶対に外せないポイントを整理しました。
第1の見どころは、築城の計画図や川並衆との生々しい連携を伝える「前野家古文書(武功夜話)」に基づくジオラマ展示です。木材の伐採から川流し、現場での急速組み立てに至る工程が精密な模型と映像で再現されており、戦国期の兵站(ロジスティクス)がいかに高度であったかを実感できます。
第2の見どころは、最上階(5階)の展望室からの眺望です。回廊に出ると心地よい風が吹き抜け、南には雄大な長良川の流れ、北東にはかつての敵城・岐阜城、南西には大垣城方面までが一望できます。「川を制する者が美濃を制した」という当時の軍事的緊張感を肌で体感できる抜群のビュースポットです。
そして来館者の記憶に残るのが、展示物自体が辿った数奇な運命です。資料館のシンボルとして寄贈された純金製ミニチュアシャチホコ(24金・重量約27kg)は、2006年10月に一部が特殊工具で削り取られて盗難に遭い、さらに2017年4月にも強化ガラスケースを割られる盗難未遂事件が発生しました。相次ぐ受難を乗り越えて厳重に警備・展示されている金鯱の姿は、ある意味で現代の資料館が刻んだリアルな生きた歴史といえます。
来城記念として人気を集めている「墨俣城 御城印」は、館内の受付窓口にて1枚300円で頒布されています。藤吉郎の馬印である千宮瓢箪(ひょうたん)をあしらった力強い筆文字のデザインで、旅の確かな証として手に入れておきたい逸品です。