医療現場で日常的に使用される「点滴(輸液療法)」は、まさに細胞外液の特性を応用した治療技術です。患者の体内で何が起きているかによって、投与する輸液製剤の種類が厳密に使い分けられます。
最も基本となるのが「生理食塩水」です。これは、ヒトの細胞外液とほぼ同じ浸透圧(約285〜300mOsm/L)になるよう調整された「0.9%塩化ナトリウム水溶液」(水1Lに対して食塩9g)を指します。生理食塩水を静脈内に点滴すると、細胞膜を挟んだ浸透圧差が生じないため、水分は細胞内には入らず、すべて「細胞外液(血漿と間質液)」のスペースにとどまります。そのため、出血や外傷、激しい脱水による血圧低下を緊急で回復させる「細胞外液補充液」として威力を発揮します。
一方で、生理食塩水にカリウムやカルシウム、乳酸(または酢酸)などを加えて、より生体の細胞外液組成に近づけたものが「乳酸リンゲル液」や「酢酸リンゲル液」です。これらは長時間の全身麻酔手術や重症熱傷など、大量の細胞外液が失われる場面で標準的に選択されます。体液の浸透圧と電解質組成を理解することは、適切な医療処置を行ううえでの絶対的な前提条件となっています。