職場復帰にあたり、「会社から完治した証明として『治癒証明書』や『陰性証明書』を持ってくるように言われた」と悩む方が少なくありません。しかし、ここには公的ガイドラインと現場慣行の間に大きなギャップが存在します。
厚生労働省は日本医師会とともに、「インフルエンザ罹患後の職場復帰において、医療機関が発行する治癒証明書や陰性証明書の提出を一律に求めることは控えるべきである」との要請を繰り返し出しています。理由は以下の3点に集約されます。
- 抗原検査の限界:治癒後も死んだウイルスの遺伝子や抗原を拾って偽陽性が出たり、逆に感染力があるのに偽陰性となったりするため、医学的な完治判定の根拠になりにくい。
- 院内感染の二次リスク:治りかけの患者が証明書取得のためだけに再受診することで、待合室で別の感染症をもらったり、他の重症患者に感染を広げたりする危険性がある。
- 医療現場の圧迫回避:冬場の逼迫する発熱外来において、単なる事務手続きのための書類作成が医師・看護師の過度な負担となる。
現在では、医療機関の診断書ではなく、「調剤薬局で発行されたお薬手帳や薬剤情報提供書」「受診時の領収書」「初診時の検査結果通知」のコピーを提示することで、感染事実と療養期間を会社へ報告する運用が標準化されています。復帰時の証明書提出を求められた場合は、厚生労働省の通知を踏まえ、代替手段で対応可能か人事労務担当者へ事前に確認することが推奨されます。