指導現場のアンケートや保護者からの相談で最も多いのが、「低いレやドを吹こうとすると『ピー』と甲高い倍音(オクターブ上の音)が出てしまう」という悩みです。これは決して子どもの肺活量や器用さの問題ではなく、音響物理学的なメカニズムに原因があります。
1. 息の温度とスピードをコントロールする「温かい息」の技術
リコーダーは息のスピード(流速)が速すぎると、管内での空気の渦が乱れ、強制的にオクターブ上の高音に跳ね上がってしまいます。低音域を吹く際は、寒い日にかじかんだ手を温めるときのように、口の中を広く開けて「ホーー」と吐く温かい息を使ってください。ストローで勢いよく吹くような冷たい息(「フー」)は厳禁です。
2. アタック(タンギング)を「トゥ」から「ドゥ・ル」へ柔らかくする
低音を出す瞬間に舌を強く突き出す「Tu(トゥ)」という強いタンギングをすると、その瞬間の気圧変化で音が割れてしまいます。『小さな約束』のような優しい曲調では、舌先を上あごの前歯の付け根に軽く触れさせる程度の「Du(ドゥ)」や「Lu(ル)」に近いソフト・タンギングを用いるのがコツです。
3. 指の「隙間ゼロ」を実現する触覚フィードバック
ジャーマン式・バロック式を問わず、プラスチック製ソプラノリコーダーのトーンホール(音穴)は、指先が1ミリでもズレていると正常に発音しません。練習の際は、指先にトーンホールの丸い跡がしっかり残るくらいの感覚を一度確認させ、「指の腹全体で吸盤のように吸い付く」感覚を体得させることが近道です。