デフレスパイラルとは?物価下落の恐怖と日本経済の真相を解剖

デフレスパイラルとは?物価下落の恐怖と日本経済の真相を解剖

デフレスパイラルとは?物価下落の恐怖と日本経済の真相を解剖とは一体何なのか? 主要なファクトを丁寧に紐解いて紹介します。

「物価が下がれば誰もが苦しくなる」と分かっていながら、なぜ日本経済は1990年代後半から約30年ものあいだ、この泥沼から這い上がれなかったのでしょうか。内閣府や日本銀行の政策推移、当時の金融史を紐解くと、複合的な要因が複雑に絡み合っていた実態が浮かび上がります。

発端は1991年のバブル崩壊でした。地価と株価の暴落により、金融機関は巨額の不良債権を抱え込みました。決定打となったのは1997年の金融危機です。山一證券や北海道拓殖銀行が相次いで破綻し、日本社会全体に極度の信用収縮と将来不安が蔓延しました。政府が公式に「緩やかなデフレにある」と認めた2001年以降、日本は世界でも類を見ない長期デフレ期へと突入します。

日本が脱出できなかった最大の理由は、経済学でいう「合成の誤謬(ごうせいのごびゅう)」が国全体を覆い尽くした点にあります。合成の誤謬とは、「個々人や個別企業が合理的な行動をとった結果、社会全体としては最悪の結果を招いてしまう」現象です。

先行きの見えない企業経営者にとって、賃金を据え置き、余剰資金を設備投資ではなく「内部留保(現預金)」として溜め込むことは、倒産を防ぐための極めて合理的な防衛策でした。同時に、給料が上がらない家計にとって、安いプライベートブランドを選び、外食を控えて貯蓄に励むこともまた、生き残るための正しい知恵でした。しかし、全員が「守り」に入ったことで国全体の総需要が消滅し、経済が自律的に回復する力を完全に奪い去ったのです。

さらに、社会心理学的な「デフレマインドの固定化」が拍車をかけました。「来年は今年より安くなっているかもしれない」という予期が定着した社会では、高額な買い物やマイホームの購入を先送りすることが賢い選択となります。日本銀行はゼロ金利政策、量的金融緩和、そして2016年からのマイナス金利政策など前代未聞の金融緩和対策を次々と打ち出しましたが、銀行が資金を供給しても企業や個人が借り入れを拒む「流動性の罠」に陥り、特効薬とはなり得ませんでした。

山下 哲也
著者

山下 哲也

デジタルガジェットとスマート家電の検証記事を多数執筆。失敗しないモノ選びを提案します。