リンパ系は、体内の余分な間質液(組織液)や老廃物、死細胞、過剰なタンパク質を回収し、静脈循環へと戻す下水処理場のような循環システムです。しかし、医学的な見地から見た場合、リンパ系は単一の層に存在しているわけではありません。皮下組織のすぐ下を網目状に広がる浅層リンパと、深筋膜(ディープファシア)の下で主要な太い動静脈や骨の近傍を併走する深層リンパの二重構造を持っています。
体全体のリンパ液の流量比率を見ると、浅層リンパが全体の約70%を占めるのに対し、筋肉の間を縫う深層リンパは約30%に過ぎません。しかし、この深層の30%こそが、四肢や内臓の深部から大量の老廃物と代謝産物を運ぶ中枢ルートであり、最終的に鎖骨下の静脈角(胸管・右リンパ本幹)へと直結する大幹線となっています。
ヨーロッパ発祥の伝統的なリンパドレナージュ(ボッダー式など)は、皮膚直下にある繊細な初期リンパ管を潰さないよう、30〜40mmHg以下という極めてソフトなフェザータッチで行われます。これに対して、日本国内で独自に発展したディープリンパマッサージは、表層の皮膚を滑らせるのではなく、深層リンパと浅層リンパの違いを明確に意識した強い圧を骨際や筋間(筋肉と筋肉の隙間)まで届かせる点が決定的に異なります。
浅層のアプローチだけでは、筋肉の緊張や姿勢不良によって押しつぶされた深部のリンパ本幹を開通させることができません。深層の筋膜や結合組織を捉え、深部リンパ管を取り巻くポンプ作用(骨格筋ポンプ)を強制的に再起動させる手技こそが、ディープリンパの本質です。